労務相談事例集

当法人に寄せられた質問とアドバイスの概要を掲載します。

従業員が行方不明となったときの対応

従業員からの連絡が途絶え、1週間連絡が取れません。就業規則では「無断若しくは正当な理由なく、欠勤が連続して14日以上に及んだとき」は、懲戒解雇できると記載されています。このまま、14日以上欠勤が続く場合に、懲戒解雇にしても問題ないでしょうか。
行方不明となった従業員への懲戒解雇は、以下の点から無効となるリスクが高いため、慎重な対応が必要です。
まず、懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒事由と処分内容が明確に定められ、周知されていることが前提となります。また、従業員の行為が懲戒事由に該当するかについては、限定的な解釈が行われます。2週間以上の無断欠勤が形式上懲戒事由に該当しても、連絡が取れない理由が事故や精神疾患などのやむを得ないものであった場合、懲戒事由に該当しない可能性があります。さらに、行為の悪質性や会社への影響などを考慮して、処分が重すぎると判断された場合も無効となります。
また、懲戒解雇時に必要とされる従業員への弁明機会の付与ができないことも、手続き上の瑕疵として処分が無効となる原因となります。
そのため、無断欠勤の原因が会社側にないか慎重に確認し、複数の手段で連絡を試みた上で、懲戒解雇ではなく普通解雇とすることが、比較的リスクの低い選択肢といえます。

給与からの控除

社員との関係を良くしようと、今年から社員旅行や食事会をしようと計画しています。 会社も一定額を負担しますが、社員の自己負担分を毎月の給与から積み立ててもらう予定です。何か注意が必要ですか。就業規則はありません。
社員の給与から積立を行う場合、以下の点に注意が必要です。
①賃金からの控除には労使協定(賃金控除協定)が必要です。
労働基準法第24条では、賃金は通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないと定められており、違反すれば罰則があります。例外として控除するには、労使協定(労基法第24条第1項但書)の締結が必要です。
②制度について書面で次の項目を明示し、全員に知らせましょう。
  • ・制度の目的
  • ・積立額と会社負担額
  • ・使用目的と方法
  • ・積立金の管理方法
  • ・積立金の管理口座(会社の運営資金と区別)
  • ・途中退職時の返金方法
  • ・不参加の場合の取り扱い返金条件
  • ・積立額や給与からの控除時期
③社員全員の同意を得て書面で残すことが重要です。
労使協定の効力は、罰則を適用しないという免罪効果であり、協定だけで控除してもよいことになりません。税金、社会保険料など法律で定められたもの以外の控除を行う場合には、契約(労働協約、就業規則、雇用契約)上の根拠を必要とします。就業規則がない場合には、労働者からの同意を得ましょう。
せっかく作る制度ですので、より関係性が高まるように社員からの質問や意見を受け付ける体制を整えることも大切です。
弊社は法定休日を土曜日としていますが、来週の金曜日に夜間作業が入り、金曜日午後8時から土曜日朝5時(休憩0時から1時間)まで業務に従事する予定です。この場合の賃金はどのように計算すればよいですか。時間当たりの賃金は2,000円です。なお、午後8時以前は業務についておりません。
業務が翌日の法定休日にまたがる場合、土曜日の0:00以降は法定休日労働としての割増賃金(35%)が必要となります。さらに深夜の時間(22:00~5:00)については深夜労働に対する割増賃金(25%)も必要となります。具体的には、以下の通りです。
  • ①金曜日の通常時間帯の賃金(20:00〜22:00)
    2,000円×2時間=4,000円
  • ②金曜日の深夜時間帯の賃金(22:00~24:00)
    2,000円×1.25×2時間=5,000円
  • ③土曜日(法定休日)の深夜時間帯の賃金(1:00~5:00)
    2,000円×1.6(1+0.35+0.25)×4時間=12,800円
合計賃金4,000円+5,000円+12,800円=21,800円
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