EMBA学習日記【13】

2021年10月8日(金)
  • リレー中小企業論⑥

当日は、千葉商科大学学長原科幸彦先生と松川電氣株式会社代表取締役小澤邦比呂先生の講義を受けました。8月から3カ月連続でオンラインにより行われました。

 

第1講義:原科幸彦先生の「持続可能な社会への変革」

原科先生は、社会工学、環境政策などがご専門です。とりわけ環境アセスメント分野では国際的に著名で、国際影響評価学会の最高賞であるローズ・ハーマン賞も受賞されています。

千葉商科大学は1928年建学以来「三方よし経営」をめざす経営者の育成を目的としてきた。それは、「治道家(組織を治める人)」を育成することでもある。

「治道家」には、大局的見地から時代の変化をとらえて、課題を高い倫理観に基づき解決する力が求められる。

先生は冒頭でそのように語られ、その見地から現代への問題提起をされていました。

次に、大きな課題である「持続可能な社会」に触れて、SDGsの各目標についてそれぞれコメントされました。特に温室効果ガス対策をどう進めるか。これまでも専門家の立場から、自治体規模で使用量を上回る発電量を再生可能のエネルギーで賄うことで可能であると主張し、世論醸成に努力してきたことを話されました。

そして、大学でも実現を目指し、キャンパス内の消費電力を自前の自然エネルギー発電で100%賄える「自然エネルギー100%大学」になるまでの取り組み・道のりについて概括的に説明されました。学内で機運を盛り上げるために学内で様々な活動をされたこと、その際、身近な人から巻き込んでいくこと、また、相手の立場や事情をよく聞いて対応するコミュニケーションなどを大切にしてきたと話されました。

大学の枠を超えて、「自然エネルギー大学リーグ」を組織し、自然エネルギー拡大を目指す大学との共同の取り組みや、様々な支援活動についても詳しく説明がありました。

先生は、「社会変革をすることが目標」であると強い意志を示さたことが印象に残りました。確かに「持続可能な社会」は、「三方よし、五方よし」が社会的規範となる社会への変革なしには実現しないのかもしれません。

 

第2講義:小澤邦比呂先生

小澤邦比呂先生は、静岡県内で人を大切にする経営「大家族経営」を実践している電気工事会社の代表取締役をされています。

先生は、社員・家族を笑顔にそして幸福にする。同様に協力業者、顧客、地域社会を笑顔にそして幸福にする。それらはどうすれば可能か考え続けてきたと話されました。

電気工事会社は下請けが多いが、松川電氣ではゼネコンの下請けはやらない。以前はやっていたが、根拠のある適正な見積もり徹夜で作成して元請に持って行っても、「半値8掛=4割に」を求められる。これでは、社員を幸せにできないと思い下請け工事はやめた。一方、利益はなくとも地域で必要とされることには、無料であってもやる。防犯灯のランプは一つ取り替えて1500円くらいなので、10個まとまったら仕事受けるという会社もある。松川電氣では、一個であっても、朝連絡が来ればその日のうちに作業してきた。そうしているうちに多くの自治体から申し込まれるようになった。誰でも、開業当初は小さな工事でも一生懸命やった。大きくなると利益になるかで判断する。金がなかった時のことや苦しかった時のことを忘れてはいけない──。

先生はそのように強調されていました。その取り組み・長年の努力が今、大きく実を結んでいるのだとわかります。

 

  • 会社が健康であるためには、身体の健康、心の健康、経済の健康の3つの健康が重要である。

松川電氣では、身体の健康のために、健康診断や社員旅行など多くの福利厚生制度があります。それらの制度の多くが協力業者やその家族を対象に含めており、松川電氣の「大家族」とは、協力業者を常に視野に入れているのだと理解できます。

心の健康対策の一つには、「家族団らんの提供」があります。会社が鏡開き、桃の節句、端午の節句など季節の行事に合わせて、団子、和菓子、クリスマスケーキなどを送り、社員が家族と団欒の時を過ごせるようにしようというものです。

現場責任者の立候補制も心の健康対策に数えられます。最も思いが深い社員が責任者になることで顧客に感動を与えられる──という理由から、規模や工期、難易度などを示して、責任者に立候補してもらうとのこと。工期が重複していない限りみんなが手を挙げる。実績が十分でない社員が手を挙げたときにはしっかりした人をサブにつけて万全を期している。
こうした経験を通じて社員は、「やりがい」を超えて「生きがい」を見出していくと言います。

70代の社員も4人活躍しており、フルタイムであれば賃金は60歳の時と変わらない。高齢社員の一人は「賃金が下がらないことよりも、必要と認めてくれることがうれしい。」と話すそうです。会社も体調や条件に応じて多様な働き方を用意してバックアップしています。

また、社員が行う社会貢献活動、街頭募金や町の保全活動などのボランティア活動はすべて出勤扱いになります。そのほかに7日間のボランティア休暇もあります。外国人学校への食糧支援なども自ら取り組むだけでなく、地域に支援の輪を広げる活動にも熱心です。2022年からは地域で長く愛されてきた文化財級の古民家を改修・保存しながら市民の憩いの場と障がい者やお年寄りの就労の場を確保する事業を始めるとのことです。

松川電氣では、採用の際、最終候補となった受験者に対して「親の足を洗い、その感想を原稿用紙2枚以上で書く」という課題を与えているそうです。受験者の回答には涙なしでは読めない感動的な内容が多く書かれているそうです。講義では比較的「穏やかな」例として一つ紹介されましたが、母の足を初めて洗うことにより母の人生を思い、感謝しつつ自分の生き方を考える内容であり、とても感動的なものでした。

そうした会社を作ってきた現役社長としての思いや言葉がしっかりと伝わる講義でした。もっと深く研究したい会社です。

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