EMBA学習日記【07】

2021年7月9日(土)
  • 第7日目

この日は終日オンライン受講。慶応義塾大学の島津明人教授が担当されるリレー中小企業論③、それから徳武産業株式会社代表取締役会長の十河孝男先生が担当される実践経営学④を、それぞれオンラインで受講しました。

  • 島津明人先生の「中小企業と健康経営:健康で生き生きと働くために」

島津先生の今回講義では、研究分野での動向を踏まえながら、職場のメンタルヘルスの目的について点検していきました。

  • 従来は労働者個人の治療、職場復帰、再発防止(3次予防)に焦点が当てられていたが、近年は2次予防(早期発見と対応)、さらに1次予防(未然防止)に目が向けられている。
  • 研究対象も個人にとどまらず、職場環境・組織の重要性についての研究が進み、どういった環境・取組が、労働者の心の健康に有効に作用するのか検証可能となってきている。
  • 健康な職場を、心身の健康と生産性の両面から注目し、課題のある組織を【①生産性が低く心身の健康も悪い「不活性組織」、②生産性が低く心身の健康は良い「低モチベーション組織」、③生産性は高いがストレスの多い「疲弊予備軍組織」】と分類し、それぞれに異なる対策をとることで、生産性が高く心の健康状態の良い組織を作ることができる。
  • 働く人が、仕事に誇り(やりがい)を感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て生き生きしている状態(ワークエンゲージメント)と、働き過ぎや脅迫的な働き方(ワーカホリズム)では、前者は心理的ストレス反応や身体愁訴が低下し、職務満足感の向上・創造的な行動の増加がみられるのに対して、後者ではほぼ逆の傾向を示す結果となる。

――そして、職場における支援や良好な職場環境構築のためのアプローチについて、多角的かつ具体的に示されました。

ワークエンゲージメントは、組織活性化をはかる重要な考え方であり、また手法も進化していることを学びました。

 

  • 十河孝男先生の「感動のオンリーワン企業を目指して」

第二講義の講師は、徳武産業株式会社の代表取締役会長、十河孝男先生。

徳武産業は、綿手袋縫製から出発し、家庭用スリッパ、学童用シューズ、ホテル用のスリッパ、ルームシューズなどを生産していましたが、特別養護施設の園長から、「お年寄りが転ばない靴を作ってほしい」と強い要請を受けたことから介護シューズを作るようになり、現在では国内介護シューズのシェア55%強を占めるナンバーワン企業です。

介護シューズを作るために、

  • 2年間で500人の高齢者に聞き取りを行い、高齢者ならではのニーズを把握
  • 腫れやむくみなどで左右サイズが違う、年金生活者でも買えるなどの高齢者ならではの要望に向き合う中で、明るく、安く、かかとがしっかりとした靴を「片方のみ販売」、「左右サイズ違い販売」など、誰もやってこなかった「業界の非常識」に挑戦

・・・・・・失敗の連続、創業以来の赤字転落、有望社員の離職などの苦境をへながら、次第に評判は高まり、「あゆみシューズ」として、急成長していきます。

専門家からは特許を取って企業利益を守るようアドバイスを受けたものの、「多くの業者の参入により、より多くの高齢者の幸せになるはず」と考えて、あえてそうしなかったとのこと。

徳武産業では、利用者にむけて、社員手書きのはがきを全商品に同梱し、誕生日にはプレゼント(年間三万件)を送るなど、シューズを売るだけではない、高齢者の幸福を願う取り組みが続けられています。そして、全国から寄せられる多くの感謝や要望からヒントを得て、商品・サービスの改善につなげているとのことです。

社員や協力業者・地域に対しても、数々の優れた取り組みが行われていて、紹介されるエピーソードにはどれも深い感銘を受けるものでした。

端正かつ穏やかな語り口で、「感動のオンリーワン企業」の本筋を示される十河先生の高潔な人柄と情熱をありありと浮かび上がらせる講義でした

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